執筆者李
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会社/職務株式会社フューチャースピリッツ
共同購入のブームが来たか?コロナ禍中の特別消費モード
新型コロナウイルスの感染拡大が加速したことで、「ゼロコロナ政策」を維持してきた上海が3月からロックダウンに見舞われており、大規模な生産停止や物流停滞が続いています。
*「ゼロコロナ政策」は感染者ゼロ人の意味ではなく、感染者一人を発見した場合、素早く該当感染者を特定し、またその濃厚接触者、次接触者などの関連者をトレースして感染可能なルートをコントロールすることです。
今回上海のロックダウンに伴う共同購入行動の前に、まず「共同購入とは?」というところからお話ししていきます。
共同購入とは?
従来の共同購入は2015年から中国で徐々に流行し始めました。団長(団地のチャットグループ発起人)が発信した情報を、団地住民(チャットグループ参加者)が見て関連プラットフォームにて商品を注文、決済します。購入した商品は後日団長の指定する場所へ届きます。(主な流れは下記画像をご参照ください)
*画像を作成する際に参考にしたサイトは、社区团购是什么? - 知乎 (zhihu.com)です。
次にお話しする「ロックダウン期間中の共同購入」とは、2022年3月の上海ロックダウン期間中に、マンション群の団長がプラットフォームを通さず自発的に発信した特定の商品に対して団地住民が集団で購入するというものです。
*画像を作成する際に参考にしたサイトは、社区团购是什么? - 知乎 (zhihu.com)です。
団長とは?
共同購入の過程で団長はキーパーソンとして重要な役割を果たしています。では「どうやって団長になるか」というと、当初はプラットフォーム会社が市場で展開する際に、専任団長を募集してトレーニングするという流れが定番でした。ロックダウン期間中においては従来のパターンの他、物資へのリソースを持つ市民、町内で信頼感が厚い市民、或いは周りの人の役に立ちたい市民が自発的に団長となりました。
なぜ共同購入が急速に普及したのか?
コロナ感染拡大の初期段階では、食料品Webサイトやアプリでの通信販売や宅配サービス、スーパーも通常営業をしていました。しかし感染者が増加するにつれ、エリアごとに小範囲な封鎖が始まり、徐々に商店街も営業停止となり、わずか2週間前後で上海が全面的にロックダウンとなってしまいました。
外出が原則禁止となり、仕事、医療、教育の他、食料不足は市民の一番の関心事となりました。多くは食料品を買うためアプリ上で決済が可能となる毎朝6時を待って「叮咚买菜」や「盒马」等のアプリで「決済」ボタンを我先にと連打し、タイミングを失って買えなかった場合は翌日また同じことを繰り返します。政府による物資支給も行われますが、数千万人単位の都会で全員が平等に数日以内に食品供給されるのは流石に難しいでしょう。
WeChat(日本でいうLINEのようなアプリ。ユーザーは10億人以上)においてマンション群(例えばXX区XX町XXアパートXX棟)のチャネルは、もともと所在地域の政府及び地元の委員会やマンション管理会社からの施策等を早く得るための情報収集地でした。ロックダウンの間に住民はチャネル上で感想や文句等を入れたり、お互いに励ましあったりするようになり、コミュニティにおける仲間意識が芽生えて来ました。
チャネルに寄せられた「アプリ上での購入を失敗しました」、「食料品を注文しても配達停止の問題などで届かない」、「とりあえずパンがほしい」といった情報を見た同グループの住民が「私はXX会社の社員だから、この問題解決できますよ」、「私の知り合いがXX会社で働いているから、XXの提供ができそう。紹介しますね」などと返信をして、同じエリアのマンション群で拡散をし、また人々のWeChat転送やWeibo転送で様々な需給情報が広がりました。そこからさらに発展し、個人の少量注文だと届けてくれない商品でもコミュニティ内での注文がたくさん集まることで共同購入できる流れができました。
共同購入の種類
従来の共同購入は主にオンラインプラットフォーム(叮咚买菜,盒马,美团买菜等)もしくは店と倉庫が一体型の大型マーケットで行われていました。
しかしロックダウン期間中においてはプラットフォームで食料品などを購入しづらくなり、代わりにサプライヤーから直接「単品メニュー」、「コースメニュー」、「ブラインドボックス」という形で注文する共同購入の流れができました。
*参考画像:左から単品メニュー、コースメニュー、ブラインドボックス
商品のカテゴリーは:
■食料品
肉、魚、野菜、卵、麺類、パン、コーヒー、牛乳、調味料など
■生活用品
消毒剤、石鹸、シャンプー、ティッシュ、マスクなど
■食器・家庭用電気
鍋、コーヒーメーカー、冷蔵庫など
どのように購入するのか?
マンション群の団長はあらゆる商品情報をチャットグループに共有し、住民はそこから欲しいものを申し込み、お金を団長に払ってもらいます。そして団長は商品数と金額を統計して、サプライヤーの窓口担当に提出します。それから商品が届くまで物流情報を確認し、品物が届いたなどの情報を住民にお知らせします。
(大体の流れは下記画像をご参考ください)
市民の声
共同購入について筆者の友人及び町内の数人に取材しました。
「今までTaobao、JD京東(中国2大EC プラットフォーム)で買い物をしていたが、コロナ禍になって初めて共同購入を使いました。今後ロックダウンが解除されたら、商品の品質や、価格、状況により継続利用するかどうかは決めていません。なぜならアフターサービスがなく、品質も保障されないからです。加えて共同購入は要望の多い特定の消耗品しか買えないからです(W氏)」
「初めて共同購入を利用しました。ロックダウン前はほとんどTaobao、JD京東、叮咚等でショッピングをしていました。コロナ収束後、もし団長がおすすめした商品がよければ継続利用します。ただ少し割高なので、もっとコスパがいいものがあれば嬉しいです(Z氏)」
「よくTaobao、Tmall、JD京東及び饿了么(出前アプリ)を使いますが、共同購入は今回初めてです。例えば水、野菜などが一時的に足りない問題を解決できました。今後品質のいい、適正価格の商品を団長にシェアしてもらい、かつグループ内の管理もよいなら、共同購入はもっと発展するかもしれません。でも今はまだ団長の管理や運営に混乱が生じていると感じます(H氏)」
「今まで共同購入を使ったことはなく、買い物は基本的にTaobao、JD京東と盒马を利用していました。共同購入では買い物をするためにマンション群に加入する必要があり、さらには町会承認しないと手に入られない物資もありました。配る時もボランティアが足りない場合は自分の棟まで届くのに時間がかかり全体的に不便だなと感じました。そのため解除後は、盒马、叮咚などの正式プラットフォームで買うつもりです(L氏)
「食べものは常に盒马で注文していましたが、初めて共同購入を経験しました。近所の人と一緒に申込みすることで物資は買えるようになりました。ただ選択肢は少なく、価格も普段より高いです。でも仕方がないです。ロックダウン解除後も、いい商品のお知らせがあれば継続利用します。団長が信頼できる人だから(R氏)」
まとめ
現場の声より、共同購入は一時的な物資不足問題を解決できたと考えられます。食料不足が解消すれば、ロックダウン中の生活での不安が軽減し、外出禁止などの不自由な生活にももう少し辛抱できます。一方、共同購入は急場しのぎで構築された購買スタイルのため、商品の選択肢が少ない、コースメニューに不要なオプションがある、割高である、アフターサービス(品質保障)がない、団長によってマンション群の管理にムラがあるという問題が存在しています。
また、共同購入以外にもロックダウン中の物資調達方法はあります。住んでいる団地にもよりますが政府からの配給の他、住民数が少ない地域や申込み状況が共同購入の最低限に達しなかった場合は、近所と物々交換したり、野菜や果物を栽培している地元の農家に助けてもらったりすることもあります。
共同購入は世相を反映しています。コロナ収束後でも共同購入のブームが継続されるか、それとも落ち着いていくか、今後の変化を見守っていきたいと思います。
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